004 道の駅あれこれ 2005年1月
法政大学経営学部 教授 今橋隆

 途中、名古屋やニュージーランドにも住んだものの、18歳のときから今や堂々たる(?)中年になるまで、多摩地区のあちこちをうろうろしてきました。合宿に避暑に、足しげく通うのは馴染んだ中央高速で山梨、長野あたり。最近はSA、PAとも売店の品揃え、レストランのメニューなど工夫を凝らし、カロリー表示、地元の味というように、「駅弁」「空弁」に負けじと「ハイウエイランチ」と呼びたいほどの百花繚乱、喜ばしい限りです。

 勤務先のセミナーハウスは、河口湖インターからくるまで20分ほど、でも夏合宿のころはお盆の前後ゆえ、道路が混んで到着時刻に30分、1時間ほども遅れる学生がけっこういます。「遅刻の時間損失は、出席者の時間価値×遅刻時分×出席者の人数」など、興ざめな講義はさておくとしたいけれど、この調子で社会に出ると本人のためならず、「目端が利いてスマートで、時間に遅れず読みをはずさず、これこそ21世紀のビジネスパースン」など、下手な説教をする仕儀となります。自分はもちろん、棚の上か窓際か。

 とはいえ1日に8時間、英書を読んだ後はバーベキュー、テニスと楽しく過ごして汗をかき、すかさずお隣の「道の駅なるさわ」にある「富士眺望の湯」に繰り出します。富士を眺めながら数種類のお風呂に入ると、まだ3ヶ月くらいの付き合いのゼミ新入生たちはすっかり打ち解け、なるほど裸の付き合いというのは馬鹿にならぬなと、これはおじんくさい感想。思い返せば、コンパで騒いで同宿のゼミに顰蹙を買い、他学部の教授に「だいたい、君のところはしつけがなってないんだよ」とお小言を頂戴したり、酔って騒いだあげくにベランダから転落して学生が怪我してしまい、病院に同行して夜明かし、遠路はるばる駆けつけたご両親に感謝されたり、思い出深いセミナーハウスです。くだんのもと学生、今や立派な金融マンで、手のかかった子(?)ほど可愛いものです。

 実はこのあたり、道の駅かつやま、道の駅とよとみと、ほとんど自治体ごとにあるんじゃないかという「道の駅ぎんざ」なのですが、ここでは静岡側にちょっとずれて、「道の駅あさぎり」の紹介です。

 ひそかに思えらく、道の駅は蕎麦屋に似ています。仰々しいのや民芸調なぞ七里結界、素朴で土のにおいがしてさりげないのが何より。その点、ここは地元の農産物が新鮮な上、野菜や漬物に加え、わさび、ハム、チーズ、ソーセージと品目も多様です。考えてみれば朝霧高原は牧畜の本場、近くにある東京農大の畜産農場では牧草の研究に余念がありません。

 先日、浜松からの帰りに立ち寄ったとき、野菜のとれとれを売っていました。小松菜、水菜、きぬさやと買い揃え、帰宅後すぐにお浸し(鰹ぶしをかけて)、サラダ(バルサミコ酢で)、ごま和え(白ゴマはその場ですって)などに初夏の香りを楽しみます。いつも便利にコンビニで買うお惣菜が、こういうときに限り、何だかちょっと悲しくなります。でもまた、買ってしまうんですけれど。

   著者プロフィール
 今橋 隆
 (いまはし りゅう)
 今橋隆


経歴
1981年3月 一橋大学商学部卒業
1989年3月 一橋大学大学院商学研究科商学専攻博士後期課程修了(単位取得退学)
1989年4月 名古屋商科大学商学部商学科専任講師
1999年4月 法政大学経営学部教授  現在に至る(交通経済学担当)

受賞歴
ポーランド政府インフラストラクチャー省 交通功労者表彰受賞(国際協力機構プロジェクト「ポーランドの鉄道民営化計画調査」支援委員として)(2004年3月)

主な著書
『日本版Private Finance Intiative〜行政改革時代の地域開発・整備・振興政策』、地域科学研究会、1999年(共著)
『自由化時代の交通政策』、東京大学出版会、2001年(共著)
「規制改革と交通への公的関与ニュージーランドのケース」、『運輸と経済』、第62巻第5号、2002年
「交通におけるバリアフリーと政策の展開」、『フィナンシュアランス』、第11巻第4号、2003年

 その他論文等多数


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