006 ヨーロッパを走ってみて 2005年5月
一橋大学大学院商学研究科 教授 根本敏則

 ヨーロッパへの出張があり、レンタカーで独、仏の高速道路、一般道路を走る機会を得た。

 まず気が付く日本の道路との違いは、最高速度が高いことであろう。ドイツの高速道路は無制限、ただし推奨速度が130キロメートルとなっている。一般道路でも市街地の幅員の狭いところでは30キロメートルだが、街を抜ければ100キロメートルになる。

 日本の交通管理者に最高速度を上げることを検討いただきたい。現在、最高速度が低すぎるため、私を含め多くのドライバーが規制を守っていないのではないだろうか。「10キロメートルなら計器の誤差の範囲である」などと言い訳して。しかし、計器の精度は向上しているであろうし、速度がデジタル情報化され、これまでより可視化できるようになった。例えば、トラック会社の運行管理者、また運送を依頼した荷主は、ドライバーの速度違反を見て見ぬふりができにくくなっているのである。

 もちろん、道路区間ごとに最高速度を上げることが事故の増加につながるか、否か、に関しては専門家の判断を仰がねばならないが、もし、安全上、最高速度を低く抑えざるを得ないとしたら、その速度を守るように指導すべきである。情報通信技術の活用で容易になった速度取締りをしない怠慢は許されない。

 他の興味深いこととして、独、仏では走っていた一般道路が、徐々にアクセスコントロールされ、中央分離帯が設置され、高速道路になっていることがある。この逆のパターンもあり、その場合は速やかに減速しなければ危険だが、それを意識して走ればすぐに慣れ、それほど安全上の問題は生じない。

 日本の道路プランナーに、このヨーロッパ型の柔軟な道路ネットワークを検討いただきたい。例えば、高速道路はこれまで市街地だろうが、山間部だろうが、同じ設計速度(120キロメートルでしょうか)で走れるように作ってきたはずである。しかし、この技術的なこだわりにより道路の建設費用は高くなっている。景観上の問題も生じさせたに違いない。交通量や地形上の制約を考慮に入れ、すなわち早く走らせるための費用と効果を考え、柔軟に設定速度を変えることはできないだろうか。

 なお、このような道路ネットワークの実現には、都市計画プランナーの協力を得ることも必要であろう。ヨーロッパで街を抜けて速度を高められるのは、道路沿道の開発が厳しく制限されているからである。地方部でも集落は相互に5から10キロメートル離れているが、集落をつなぐ道路の沿道はほとんど農地、山林で、都市的な土地利用がなされていない。沿道から車や人が出入りすることがなければ、道路そのものの規格が低くてもそれなりの最高速度が実現できる。

 「交通、道路、都市計画の皆さん、この次、私とヨーロッパに行きませんか。一緒にドライブしたら、いい知恵が浮かぶのではないでしょうか。」

 
 (林徳治氏撮影)

   著者プロフィール
 根本 敏則
 (ねもと としのり)
 根本敏則


経歴

1976年3月 東京工業大学工学部社会工学科卒業
1981年3月 東京工業大学理工学研究科社会工学専攻博士課程修了
1986年4月 福岡大学経済学部助教授
2000年4月  一橋大学大学院商学研究科教授、現在に至る

主な著書
『シティロジスティクス』(森北出版)(共著)2001年1月
『Logistics Developments Supported by ICT and ITS in the Asia-Pacific Region』(OECD & Institute of Highway Economics)(共著)2003年10月
「アジアにおけるインターモーダル輸送の確立にむけて」、『海運経済研究』、第37号、pp.5−20、2003年10月
 その他論文等多数


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