018 真っ赤なランボルギーニ 2007年7月
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻講師 大森 宣暁

俺は速い! 昨日までの俺とは違う。父の日にプレゼントされた真っ赤なランボルギーニ。最高だ。やはり、乗り心地が違うな。気分がいい。ひざへの負担も軽い。交通は活動の派生需要で移動は負の効用だと考えられているが、正の効用をひしひしと実感するな。

おっと、危ない! ぶつかるところだったじゃないか。急に飛び出しちゃいけないよ。気をつけてくれ。それにしても、細い道なのに交通量が多く、車と自転車と人が輻輳しているところだな。ここは一方通行にして、歩車共存道路などの対策が打てないものか。区画整理もなかなか進まないしな。そうすると、スピードを落とさざるを得なくなるか。せっかくのランボルギーニの性能をフルに発揮できないかもしれないな。

あー、今日も信号待ちの行列だ。近道だし、宇大注1キャンパスの中を通行してしまおうか。いや待て、宇大キャンパスでも通過交通は迷惑に違いない。本郷キャンパスのことを思い出せ。社会的ジレンマを感じるが、ここは我慢するか? うーん、やはり今日は宇大キャンパスの視察ということで、ちょっと失礼しておじゃましよう。何っ! なんて大きな台形ハンプだ。本郷キャンパスでもこのくらいやらないと車の速度は抑制できないかもしれないな。視察の甲斐があったというものだ。

ふっ、今日も宇大生の自転車軍団のお出ましか。まあ、狭い自転車歩行者道だが一列に並んで走行しているから良しとしよう。あっ、信号が青に変わった。ここの信号の青現示は非常に短い。一気に行くか? 俺のランボルギーニなら間に合いそうだ。でも、急がば回れ。安全運転、安全運転。ここは右折して次の信号を左折しよう。今日はいつもより1分30秒余裕があるじゃないか。
繁華街の朝は、殺伐とした風景だ。おやっ? 駅東口のLRT注2の看板も大きいが、これまた大きな看板発見。なかなかきれいな女性じゃないか。一度、この店にも行ってみたい気もするな。料金はいくらだ?

ようやく駐輪場に着いた。そういえば、新たに定期契約しなければならないのかな。ただ、梅雨の間は車で送迎してもらうことも多くなりそうだ。定期契約よりも一日利用の方が安くなるかもしれない。しかし、毎日100円支払うのも面倒だな。うん、やはり定期契約にしよう。そうか、車体にシールを貼らなければならないのか。ランボルギーニ、ごめんよ。我慢しておくれ。

今日は新幹線注3の中で何を飲むべきか? 最近たばこの本数も多いから、ビタミンCたっぷりのやつにするか。それとも、子供のお土産のことを考えて、おまけ付きのお茶にするか? いや、本当に子供のことを考えたら、父親の健康が第一だろう。今日はビタミンCだ。えっ? SUICAのチャージ残額不足だと! この店でもチャージできるらしいが手持ちも少ないから、仕方ない、現金払いだ。そろそろ新幹線がホームに到着するぞ。急げ急げ。



注1:宇都宮大学のこと。バス停名も「宇大前」など、地元ではこう呼ぶ。
注2:宇都宮では長年LRTの導入が議論されている。
注3:筆者は昨年11月より、宇都宮−上野間を新幹線通勤している。


   著者プロフィール
 大森 宣暁
 (おおもり のぶあき)

 



経歴
1995年3月 東京大学工学部都市工学科卒業
2000年3月 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程修了、博士(工学)取得
2000年4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科助手
2003年4月 東京大学大学院工学系研究科講師、
現在に至る。

主な論文
GISを用いた活動交通分析・評価システムの開発と適用、
日交研シリーズ A-343、日本交通政策研究会、2003年.
Two Applications of GIS-Based Activity-Travel Simulators. In Timmermans H. (ed.), Progress in Activity-Based Analysis, pp.415-435, Elsevier, Oxford, 2005.
Meeting Appointment and Waiting Behavior with Mobile Communications, Transportation Research Record 1977, pp.250-257, 2006.


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